ポルトガル語に入った日本語

日本語とポルトガル語の関係で特筆すべきは、日本語のほうからポルトガル語へ輸出した外来語もあることである。もちろん jud(柔道)、carat(空手)などはポルトガル語の辞書に載っているが、それらは明治以後に主に英語を通して入ったもの。それ以前に、日本語から直接ポルトガル語に入った語があるのだ。それは同時に、初めてヨーロッパ語に入った日本語の単語でもある。bonzo、biombo がそれで、「坊主」「屏風」のこと。なかでも bonzo は、ポルトガル語を通じてスペイン語やフランス語にも取り入れられ、この語はヨーロッパに広まることになる。
ところで「坊主」は現代の日本語では軽蔑的なニュアンスもある語だが、当時は僧侶一般の呼称であった。当然、ポルトガル語には「(仏教の)僧侶」の意味で伝えられたが、いつの間にか bonzo には「偽善者」という第2の意味合いが加わるようになった。本来は敬称だった日本語の「お前」が現在では主に目下の相手に対して用いられるように、ある語が時が経つにつれ意味をおとしめられていくのは珍しくないが、ポルトガル語となった bonzo にも日本語と同様のニュアンスが加わったのは面白い。「坊主(bonzo)」は「バテレン(padre)」のライバルだったからかもしれない。






